中国のシラクサとプラトン
王力雄 著
本書の内容
本書は、王力雄氏による数十年間にわたって中国の社会、政治と民族問題についての観察と思考の集大成であり、「毛沢東思想」と「鄧小平理論」の欺瞞性、薄熙来事件と派閥政治、政治改革幻想の崩壊過程、中国における民主化、民族和解のプロセスについての深い思考など、現代中国が抱えている様々な問題についての深い洞察を余すことなく描き出している。
目次
- 序言 政治分子が政治に遭遇する時
- 第1章 毛沢東主義と人間天国
- 第2章「鄧小平理論」と底辺毛沢東
- 第3章 薄熙来と「Nシリーズ」
- 第4章 超越者同盟でエリート同盟を突破
- 第5章 漸進組織で民族理性を抽出
- 第6章 ダライ・ラマの死と再生
- 第7章 崩壊がメカニズムとなり、運命となる
- 第8章 中国運命三部作:大典・黄禍・転生
- 第9章 世界には方法が必要
- 第10章 火星人類のための新型民主主義を求めて ( 省略 類)
- まとめに代えて 劉暁波:『政治幻想狂—力雄に寄せて』
著者紹介
王力雄(おう りきゆう、1953―)
王力雄(おう りきゆう、1953―)、中国の著名な作家と思想家、山東省出身、漢族、現在北京在住。
1991年に「秘密」の名で台湾とカナダで同時に長編政治小説『黄禍』を出版し、現代科学技術を背景に今日の中国政治プロセスと展望を推演する小説の新形式を開拓。その壮大な視野、深刻な社会への関心と科学的分析で現代の中国人に大きな影響を与え、アジア週刊20世紀中文小説100選に選出された。その後の政治小説『セレモニー』でハイテクを利用して全体主義政権を作り、国民を完全に監視し、世界に挑戦する中国の行方をいち早く予測した。
王力雄は長期にわたり中国がいかに政治体制の変革を実現できるかという問題を研究し、激しい大規模な社会衝突を避け、普遍的価値を認め人民が真に自由と幸福を得られる近代国家への平和的移行を目指すことが、その政治小説創作の出発点である。またダライ・ラマの転生をめぐる中国当局のやり方でチベット問題は一層混迷することも予測している。
主要著作:
- 『権力溶解——層次選出制』(明鏡出版社、1998)
- 『天葬——チベットの運命』(明鏡出版社、1998)
- 『漸進民主』(台湾大塊文化、2006)
- 『我的西域、君的東土』(大塊文化、2007)
- 『権民一体論』(台湾大塊文化、2016)
- 『大典』(台湾大塊文化、2017)
- 『転生』(台湾雪域出版社、2020)
受賞歴:
- 2002年中文独立ペンクラブ創作自由賞受賞
- 2003年Hellman-Hammett賞受賞
- 2009年ダライ・ラマより真理の光賞受賞
推薦の言葉
「現代中国思想において、王力雄先生は30年以上にわたって独特の視点から深みのある発言をし続け、20世紀以来の中国の作家が同時に政治思想家の使命を担うという伝統を継承している。特に彼の民族問題への関心と洞察は注目に値する。本書は習近平政権発足当初、著者自身が『政治に遭遇』し『暴政を変える』ことを試みた経緯と思考を記録し、それは毛沢東後の中国社会全体の『改革のジレンマ』の最後の現れと見ることができ、中国の未来の方向性を見極める上で特別な価値を持つ。」——呉国光(アメリカ・スタンフォード大学中国経済制度研究センター上級研究員)
序言からの抜粋
政治分子が政治に遭遇する時
私のシラクサ行きは、様々な合縁機縁と具体的状況が原因であったが、確かにこうした潜在的推進力があった——中共新体制への期待である。2012年中共第18回大会で習近平が総書記に就任し、当時の中央規律検査委員会書記王岐山と連携して大規模な反腐敗行動を起こし、当時は一部の民心を得て、二人の協力を「習王体制」と呼ばれた。
中国では、我々は「知識分子が政治に遭遇」するのではなく、「政治分子が政治に遭遇」するのである。「シラクサ」の目には、我々は常に「異議分子」「反動分子」「分裂分子」「扇動分子」「敵対分子」……である。要するに全て政治に関わる分子であり、知識分子というより政治分子と言う方が正確である。そして政治分子にとって、政治は何ら誘惑ではなく、天職なのである。